大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1532号 判決

≪証拠≫によれば、本件当事者間において右の保証金は、被控訴人が本件賃貸借に基づき負担することあるべき一切の債務を担保することを目的として控訴人に預託する旨の合意の存したことが認められるのであって、その限りでは右保証金は、いわゆる敷金と同一視すべきものと考えられるが、一方被控訴人が控訴人に預託した一小間当り三五万円の割合による四小間分の保証金一四五万円のうち、一小間当り五万円の割合をもって計算した四小間分の二〇万円は、控訴人が賃貸借期間満了のとき、右の保証金から控除して清算することがあらかじめ合意されていたことは当事者間に争いがなく、この事実に前記≪証拠≫における本件賃貸借契約中の保証金の控除に関する約定の文言(別紙賃貸借契約書中の第二一条参照)をも斟酌して考えると、本件賃貸借が貸主である控訴人の責に帰すべき事由により、中途で終了するなどの例外的場合を除き、右の二〇万円は、被控訴人が保証金によって担保されるべき債務の負担の有無に関係なく、当然に控除される趣旨であることは明らかである。そうして見ると、本件賃貸借に関し被控訴人が控訴人に預託した前記一四五万円は、そのうち一二五万円のみが前記のように敷金と同一視すべき性質の金員であり、控除の対象とされたその余の二〇万円は、保証金の名目にかかわらず、その実質は本件賃貸借につき毎月定期に支払わるべき賃料のほかに、約定の賃貸借期間を一期として定められた前払賃料であると解すべきものであり(前述の例外的な場合においては、未経過分前払賃料について控訴人に返還義務が生じ、この部分は損害賠償の担保たる機能をあわせ有するとしても、それはあくまで例外的場合であると考えられる。)、控訴人が本訴において主張する保証金の一部の償却とその補填に関する合意も、所詮は、右認定の賃料の前払を定めた合意の存在を主張するにほかならないと解するのが相当である。

そして、前記≪証拠≫を総合すれば、本件賃貸借は、前記昭和五二年三月三一日の賃貸期間の満了の際に借家法二条一項の規定により、右賃貸借と同一の条件をもって更に賃貸借をしたものとみなされて現在に及んでいることが明らかであるから、前記認定の敷金と同一視すべき保証金一二五万円は、この更新された賃貸借に引つがれたというべきであるが、そのほか被控訴人は、更新前の賃貸借において定められていたと同様、更に賃貸借が成立したとみなされた昭和五二年四月一日には、控訴人に対し、約定の賃貸期間を一期とする前払賃料として二〇万円を支払うべき債務を負担し、同時に右債務の履行期が到来したと解するのが相当である(もし然らずして、更新の際被控訴人が既償却分二〇万円に相当する金員を控訴人に支払う義務がないとすれば、更新後における目的物使用収益の対価が更新前よりも低減すると解すべき理由はないから、更新の時点において貸主である控訴人が保有する一二五万円のうち金二〇万円が次の期間満了時までの前払賃料、その余の一〇五万円が敷金と同一の性質を有する保証金であると解せざるをえないこととなるが、一方敷金と同一の性質を有する保証金の額が時期を追って低減していくことが、当事者間で当然のこととして合意されていたと解することは本件において困難であるといわざるをえないし、その点についての合意が欠缺していたとするならば更新後の保証金の額についても借家法第二条第一項により、更新前と同一とする合意があったとみなすほかはない。それ故前述のように解するほかはないのである。)。

(石川 寺沢 原島)

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